革製品用語の『越革、越鞣し』
革製品を知りたい
先生、革製品の用語『越革、越鞣し』について教えてください。
革製品の研究家
『越革、越鞣し』とは、伝統社会で最高の鞣し技術を誇った姫路白鞣し技法のことです。いつ頃から始まったかは明らかではありませんが、遅くとも鎌倉時代には「播磨の白き力革」などの軍記物の記述などから行われていたと考えられています。
革製品を知りたい
なるほど、鎌倉時代からあったんですね。鞣製法はどうだったのでしょうか?
革製品の研究家
中世~江戸時代前期までは、ぬか(糠)を用いて毛根の発酵を促進する方法が主流でした。18世紀にはいると、鞣製法に大きな変化が起こり、越村から新しい鞣製法が大坂や高木村に伝わったとされています。
越革、越鞣しとは。
「革製品の用語『越革、越鞣し』とは、姫路白鞣し技法がいつ頃から始まったかは明らかではありませんが、遅くとも鎌倉時代には軍記物の記述などから行われていたと考えられています。
当時の高木村と皮革問屋が集中する大坂渡辺村の後世の伝承から、18世紀に入った元禄頃に鞣製法の大きな変化が起こったと考えられています。出雲国越村から新しい鞣製法が大坂や高木村に伝わったというものと、聖翁が高木村の人々に鞣製法を伝授したとの伝承もあります。
18世紀後半には文献に『こし革』、『越鞣し革』が表れます。」
越革、越鞣しの歴史
越革、越鞣しの歴史
越革、越鞣しの歴史は古く、少なくとも奈良時代には存在していたと考えられています。当時の革製品は、鹿革や牛革が主に使用されており、鞣し剤としては柿渋や植物性の油などが使われていました。平安時代になると、中国から宋革と呼ばれる革が伝来し、越革、越鞣しの技術がさらに発展しました。宋革は、牛皮を植物性の油脂でなめした革で、柔軟性と耐久性に優れており、高級な革製品に使用されました。室町時代になると、越革、越鞣しの技術はさらに洗練され、革製品の種類も多様化しました。江戸時代には、革製品の需要が高まり、越革、越鞣しの技術は全国各地に広がりました。明治時代になると、西洋から革製品の製造技術が伝来し、越革、越鞣しの技術も近代化しました。現在では、越革、越鞣しの技術は伝統工芸として受け継がれ、高級な革製品に使用されています。
ぬかを用いた鞣製法
-ぬかを用いた鞣製法-
ぬかを用いた鞣製法は、皮革を柔らかくするために、米ぬかを使い鞣す方法です。米ぬかは、米を精米する際にできる副産物で、デンプンやたんぱく質を多く含んでいます。このデンプンやたんぱく質が、革の繊維を満たし、柔らかくするのです。ぬかを用いた鞣製法は、古くから伝わる伝統的な方法で、現在でも一部の地域で行われています。
ぬかを用いた鞣製法は、まず、皮革を水に浸して柔らかくします。次に、ぬかを加えて揉み込みます。ぬかが皮革に均等に行き渡るように、丁寧に揉み込む必要があります。揉み込んだ後は、皮革を一定期間放置します。放置期間は、皮革の厚さや柔らかさによって異なります。放置したら、皮革を水洗いしてぬかを洗い流します。最後に、皮革を乾燥させれば完成です。
ぬかを用いた鞣製法で作った革は、柔らかく、しなやかな風合いが特徴です。また、ぬか特有の香りが残るため、独特の風合いがあります。ぬかを用いた鞣製法で作られた革は、バッグや財布などのファッション小物や、靴などの履物によく使われます。
元禄頃に起こった鞣製法の変化
元禄頃に起こった鞣製法の変化
元禄期は、江戸時代の日本において、政治、経済、文化の各分野で大きな変化があった時代です。殖産興業政策により、商工業が発展し、庶民の生活も向上しました。この頃、革製品の鞣製方法にも変化が起こりました。それまでの揉み革や塗革に加えて、新しい鞣製方法である「越革」「越鞣し」が導入され、これによって革製品の品質が向上しました。越革や越鞣しは、皮革に渋を浸透させることで、皮革を強くしなやかにする製法です。越革は、渋を浸透させた皮革を揉んで仕上げたもので、越鞣しは、渋を浸透させた皮革を伸ばして仕上げたものです。越革や越鞣しによって、革製品は耐久性と防水性が向上し、より実用的なものとなりました。また、越革や越鞣しによる革製品は、従来の革製品よりも高級感があり、庶民の間でも人気の商品となりました。越革や越鞣しは、江戸時代の革製品の品質を向上させ、革製品の普及に貢献した革新的な鞣製方法です。
出雲国越村から伝わった新しい鞣製法
-出雲国越村から伝わった新しい鞣製法-
出雲国越村では、古くから革なめしの技術が盛んで、平安時代にはすでに越後や関東方面に出荷されていた記録があります。鎌倉時代になると、越前国(現在の福井県)の武藤吉兵衛が、越村で革なめの技術を学び、越前国に持ち帰ります。武藤吉兵衛は、この技術を改良し、越前独自の革なめしの方法を確立しました。
武藤吉兵衛の革なめしの方法は、牛革を水に浸し、石灰と木灰を加えて灰汁を作り、その中に皮を漬け込んで脱毛します。次に、皮を水で洗い流して灰汁を除去し、渋でなめします。渋は、柿渋や栗渋、あるいはミロバランなどの植物由来のタンニンを含む液体のことで、皮のコラーゲンと結合して革を強くします。
越前国で生まれたこの新しい鞣製法は、やがて全国に広がり、日本の革なめしの主流となりました。この鞣製法で作られた革は、柔らかく丈夫で、耐水性にも優れており、鎧や兜、履物など様々な用途に使用されました。
聖翁による鞣製法の伝授
革製品用語の『越革、越鞣し』
聖翁による鞣製法の伝授
室町時代初期の著名な僧侶である聖翁(1290~1374)は『革の秘法』を記した書物において、牛革を柔らかく加工する方法について述べています。
聖翁は、革の鞣しを行う際に、塩と灰汁を用いることを推奨しています。これは、塩と灰汁が革のタンパク質を変質させ、柔らかくする効果があるためです。
また、聖翁は、革をなめす際には、十分な時間をかけなければならないと述べています。これは、短時間では、革のタンパク質が十分に変質せず、硬い革になってしまうためです。
聖翁の鞣製法は、室町時代から江戸時代にかけて、広く用いられました。そして、この鞣製法を用いて作られた革は「越革」「越鞣し」と呼ばれ、その品質の高さで知られていました。