革を語る! 鉄イオンの役割に迫る
革製品を知りたい
先生の鉄イオンついての授業がとても興味深かったです。特に、皮革製造において鉄イオンが望ましくない存在で、皮革製造に頻繁に使用される植物タンニンは鉄イオンと反応して黒色の鉄じみを生成するということについてもっと詳しく知りたいです
革製品の研究家
はい、そのように感じていただいて嬉しいです。鉄イオンは皮革製造において、確かに望ましくない存在です。植物タンニンと反応して黒色の鉄じみを生成するだけでなく、加脂剤とも反応して不溶性の金属石けんを生成するからです
革製品を知りたい
なるほど、植物タンニンと鉄イオンの反応で黒色の鉄じみが生成されるということはわかりました。でも、なぜ鉄イオンは皮革製造に望ましくない存在なのでしょうか?
革製品の研究家
それは、鉄イオンが皮革の品質を低下させるからです。鉄イオンは皮革を硬くしたり、変色させたり、腐食させたりします。また、鉄イオンは細菌の繁殖を促進するため、皮革製品のカビや細菌の発生を招くこともあります
鉄イオンとは。
革製品の用語である「鉄イオン」とは、鉄イオンには2価と3価があり、2価イオンは還元剤として使用されます。皮革製造において鉄イオンは望ましくない存在で、皮革製造に頻繁に使用される植物タンニンは鉄イオンと反応して黒色の鉄じみを生成します。明治時代以前の日本や中国南東部、東南アジアの風習であるお歯黒(鉄漿)は、鉄イオンと植物タンニンとによる発色の典型的な例で、昔は皮革の染色にも利用されていました。鉄イオンは加脂剤とも反応して不溶性の金属石けんを生成します。少なくとも再鞣し以降はカルシウムなどのアルカリ土類金属イオンや鉄などの金属イオンを含まない軟水の使用が望まれます。一方、3価の鉄イオンは鞣し効果が認められますが、まだ実用化には至っていません。
鉄イオンとは?
-鉄イオンとは?-
鉄イオンとは、鉄原子が電子を失ったときにできるイオンのことです。 鉄は、鉄鉱石から製鉄され、さまざまな工業製品に使用されている金属です。また、鉄は人体にとって重要な栄養素であり、赤血球のヘモグロビンを構成しています。鉄イオンは、鉄原子が電子を失うことで生成されますが、その過程では酸素が消費されます。この反応を「酸化」といいます。酸化は、鉄が錆びる原因となる反応でもあります。
鉄イオンには、二価鉄イオンと三価鉄イオンの2種類があります。二価鉄イオンは、水溶液中で青緑色を呈し、三価鉄イオンは、水溶液中で黄色を呈します。鉄イオンは、水溶液中で加水分して水酸化物イオンを生成します。水酸化物イオンは、アルカリ性であり、鉄イオンを沈殿させます。この反応を「沈殿」といいます。
鉄イオンは、鉄鋼、セメント、化学、染料、医薬品など、さまざまな工業製品に使用されています。また、鉄イオンは、鉄分を強化した食品やサプリメントにも使用されています。鉄イオンは、人体にとって重要な栄養素ですが、過剰摂取すると、鉄中毒を起こす可能性があります。鉄中毒の症状としては、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、疲労、頭痛などが挙げられます。
革作りにおける鉄イオンの役割
革作りにおける鉄イオンの役割
革は、動物の皮をなめして作られる素材です。なめしとは、皮のコラーゲン繊維を安定させ、腐敗を防ぐための加工のことです。なめしにはさまざまな方法がありますが、その中でも最も一般的なのが、鉄イオンを用いる方法です。
鉄イオンは、皮のコラーゲン繊維と結合して、繊維を安定させます。また、鉄イオンは、皮の光沢や色を良くする効果もあります。鉄イオンによるなめしは、古くから行われてきた伝統的な方法であり、現在でも広く用いられています。
鉄イオンによるなめしの工程は、大きく分けて4段階に分かれます。まず、皮を水で洗浄して、汚れや油分を除去します。次に、皮を鉄イオンを含む溶液に浸します。この溶液は、通常、硫酸鉄または塩化鉄を用いて作られます。皮が溶液に浸された後、皮のコラーゲン繊維と鉄イオンが結合し、繊維が安定します。
次に、皮を水で洗浄して、鉄イオンを洗い流します。最後に、皮を乾燥させて完成させます。鉄イオンによるなめしは、皮を柔らかくし、腐敗を防ぐ効果があります。また、鉄イオンは、皮の光沢や色を良くする効果もあります。鉄イオンによるなめしは、古くから行われてきた伝統的な方法であり、現在でも広く用いられています。
鉄イオンは、革作りにおいて重要な役割を果たしています。鉄イオンがなければ、皮は腐敗してしまい、革製品を作ることはできません。鉄イオンは、皮のコラーゲン繊維と結合して、繊維を安定させます。また、鉄イオンは、皮の光沢や色を良くする効果もあります。
鉄イオンと加脂剤の反応
革を語る! 鉄イオンの役割に迫る
革の製造工程において、鉄イオンは重要な役割を果たしています。鉄イオンは、タンニンと結合して革の強度や耐久性を高めたり、加脂剤と反応して革に柔軟性や防水性を与えたりします。
鉄イオンと加脂剤の反応
鉄イオンは、加脂剤と反応して石鹸状の金属複合体を生成します。この金属複合体は、革の繊維をコーティングして柔軟性や防水性を高めます。鉄イオンと加脂剤の反応は、革の製造工程において重要なステップであり、革の品質に大きく影響を与えます。
鉄イオンの濃度や種類、加脂剤の種類や濃度、反応温度や時間など、さまざまな条件によって金属複合体の生成量が変化します。金属複合体の生成量が多すぎると、革が硬くなったり、ベタついたりします。逆に、金属複合体の生成量が少なすぎると、革が柔軟性を失ったり、防水性が低下したりします。
鉄イオンと加脂剤の反応を適切に制御することで、革の品質を向上させることができます。
皮革製造における鉄イオンの除去
革を語る! 鉄イオンの役割に迫る
多くの産業分野で広く使用されている牛革。この牛革は生皮をさまざまな工程を経て鞣して作られます。この鞣しの工程では皮革を構成するタンパク質であるコラーゲンへの鉄イオンの吸着が大きな課題となっています。コラーゲンに鉄イオンが吸着すると、皮革の黄変や強度の低下につながり、製品の価値を低下させてしまいます。
皮革製造における鉄イオンの除去
鉄イオンの吸着による皮革の黄変や強度の低下を防ぐためには、鞣しの工程で鉄イオンを除去することが重要です。鉄イオンを除去する方法としては、鉄イオンとキレートを形成するEDTA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)などのキレート剤を使用する方法や、鉄イオンを還元して不溶性の化合物に変換する還元剤を使用する方法などがあります。
キレート剤は鉄イオンとキレートを形成することで、鉄イオンの活性を低減させることができます。キレート剤としてはEDTAの他に、NTA(ニトリロ三酢酸トリナトリウム)やHEDTA(ヒドロキシエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム)などが使用されます。
還元剤は鉄イオンを還元して、不溶性の化合物に変換することができます。還元剤としては、亜硫酸ナトリウムや二酸化硫黄などが使用されます。
近年では、鉄イオンを除去するための新しい方法として、微生物を活用した方法も研究されています。微生物の中には、鉄イオンを吸収したり、鉄イオンを還元したりする能力を持つものがあります。これらの微生物を活用することで、鉄イオンを効率的に除去することができると期待されています。
3価鉄イオンの鞣し効果
3価鉄イオンの鞣し効果
革を柔らかくしなやかにするためには、鞣しという工程が不可欠です。鞣しとは、生皮のコラーゲン繊維に化学物質を結合させることで、腐敗を防ぎ、柔軟性や耐久性を高める処理のことです。鉄イオンは、古くから鞣し剤として知られており、3価鉄イオンは特に鞣し効果が高いことが知られています。
3価鉄イオンがコラーゲン繊維に結合すると、繊維同士の結合が強くなり、革が引き締まって硬くなります。また、3価鉄イオンはコラーゲン繊維を酸化させるため、革が変色して茶褐色になります。この酸化反応により、革の耐熱性や耐水性も向上します。
3価鉄イオンによる鞣しは、古くから行われてきた伝統的な鞣し方法の一つです。植物性タンニンや鉱物性タンニンによる鞣しよりも低コストで、比較的短時間で鞣すことができます。また、3価鉄イオンによって鞣された革は、柔軟性と耐久性を持ち、様々な用途に使用することができます。